チャイムが鳴ったら帰りましょう。

思いつくままに飽きるまで書きます。

結婚

人が結婚を実感するのはいつだと思う?

 

仕事を終えて帰宅したら「おかえり」の声があった時か?

 

違う。

 

朝起きたら隣で一緒に眠そうな目を擦る妻の姿を見た時か?

 

違う。

 

人が結婚を実感するのは、タオルを頭にぐるぐる巻きにし、すっぴん半裸で扇風機にあたりながらベッドの上でスマホゲームに勤しむ風呂上がりの妻の姿を見た時だ。

 

僕の妻は高校時代、しずかちゃんみたいな人だった。

頭脳明晰で性格も良く、誰にでも分け隔てなく接するいわば優等生。

吹奏楽部で楽器に青春を吹き込む音楽少女だった。

 

高校一年生の時、僕がインフルエンザで学校をしばらく休んだことがあった。

休業明け、久しぶりに登校すると、

「はいこれ、kyazu君の」

と言って、1週間分の全ての授業のノートをくれた。

なんと、自分のものとは別にルーズリーフに全授業の板書やメモを残してくれていたのである。

こんな子がいるのかと仰天した。

理科総合Bまでノートとってた。

理科総合Bって、出席してても寝てたのに。

 

そんな彼女とそこからロマンスになったわけでもなく、全く男女の関係にならぬまま卒業したわけだが、次会った時には妻は凄腕のデュエリストになっていた。

何を言ってるのか分からないだろうか、事実である。

 

社会人1年目の夏、高校時代の友人とご飯に行った時、「近くにいる元クラスメートに声かけてみよう」という話になり、連絡したらやって来た。

5人くらいで3時くらいまで喋ってたと思う。

しかし衝撃だった。

1人は旅館の女将に、1人は大学辞めてたい焼き屋の店長に、1人は新年会でティガレックスのモノマネを披露してドン滑りした大学職員になっていた。

そして妻は、関西・東海地方を統べるデュエルクイーンになっていたのである。

 

後日聞いたところによると、関西大会の優勝を機にデュエルは引退したそう。

その際、売りに出した20周年のブラックマジシャンガールを学費にして通信制の専門学校に入学し、資格試験に勤しんでいるというのだ。

 

今でもデュエリストの血は疼くようで、定期的にデッキ環境とシングルカードの価格相場のチェックは欠かしていない。

引退したんじゃないのかよ。

 

付き合っていた頃は、平日帰りが遅くなる一人暮らしの僕のために、必ず作り置きをしてから帰る健気な彼女だった。

今でも家事はほとんど彼女がしてくれているし、感謝こそあれど文句は全くない。

趣味は合わせてくれるし、友人付き合いもリスペクトしてくれる、最高のパートナー、もとい相棒である。

 

そんな彼女に今欲しいものは?と聞くと、いつも同じ答えが返ってくる。

 

「ブルーアイズかな」

 

ブルーアイズである。